【あらすじ】
「感謝祭(=サンクスギビング)」発祥の地マサチューセッツ州プリマス。
一年に一度の祝祭に沸き立つ人々だったが
突如、ダイナーで働く女性が何者かに惨殺される事件が起こる。
その後も一人、また一人と消えてゆく住民たち。
彼らは皆、調理器具を凶器に、感謝祭の食卓に並ぶ
ご馳走に模した残忍なやり口で殺害されていた。
街中が恐怖のどん底に突き落とされるなか、
地元の高校の仲良しグループのジェシカたちは、
ジョン・カーヴァーを名乗る謎のインスタグラムの投稿に
タグ付けされたことに気づく。
そこには豪華な食卓が用意され、自分たちの名札が
意味深に配されていた・・・。
【作品情報】
クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスの2人が世に出した
『グラインドハウス』(2007)の中で上映されたフェイク予告編をついに長編化!
フェイク予告編を手掛けたイーライ・ロスが自ら監督を務めたスプラッター映画だ。
イーライ・ロス監督は『ホステル』や『グリーン・インフェルノ』などホラーやスリラー映画の作り手として注目を集めている。
キャストには、『グレイズ・アナトミー』のパトリック・デンプシー、
『シーズ・オール・ザット』(2021)のアディソン・レイや
『ホステル』のリック・ホフマンらが出演。
【ネタバレ感想】
★掴みはバッチリ
映画の冒頭には、連続殺人事件の引き金となる出来事が描かれていて作品内の時間軸でいうと、1年前の感謝祭へ遡る。
1年前の感謝祭の頃、開店前のショッピングセンターへ押し寄せる人々。
そう、今日はブラックフライデーセールの日だったのである。
(話はいったんそれるが、感謝祭(=サンクスギビング)はアメリカやカナダの祝日のひとつで、アメリカでは毎年11月の第4木曜日に充てられている。翌日の金曜日、学校や会社も休暇とするところが多いらしい。
その金曜日に小売店などは売れ残り品などを含めたセールを実施していて大勢の人々がやってくる。小売店の売り上げが伸びて黒字になる=ブラックフライデーという名で現在は定着したようだ。
日本でもこの習慣に乗っかったセールは広く行われていてすでにお馴染みの言葉だろう。)
主人公・ジェシカがショッピングセンター経営者の娘ということもあり仲間たちと一緒に裏口から開店前の店へ入店。
ステルス作戦だ、とのたまいつつ、お調子者の1人が外で待つ人々を挑発してしまったことで外で開店を今か今かと待つ人々の怒りや不満が爆発する。
そこから始まる阿鼻叫喚の地獄絵図!
暴徒のように化した人々が開店前のバリケードは力づくで突破し店のガラス戸をぶち破り店内へ流れ込む!
商品を奪い合い、押し合いへし合い、殴り合い小競り合い、自分さえよければそれで良いのだ!と大暴れする客達による大混乱が発生。
ついには死者も出てしまう結果となった。
映画的に大げさに描写しているんだろうと笑ったが、調べると現地のブラックフライデーセールの様子の映像の中にも商品争奪戦は見られて消費社会への風刺となっているのだろうか。
コロナ禍の中、スーパーの商品が強奪されていくニュース映像も思いだした。
多人数でいる時に、周囲に流されやすくなったり判断力が低下したりと人間の愚かさも伝わってくるシーンだし、エスカレートしていく人々の様子にブラックというか不謹慎な笑いも引き起こされ、かなり良い掴みのシーンだった。
商品の奪い合いシーンといえば、『ジングル・オール・ザ・ウェイ』は純粋なコメディで笑えるのに、似た状況も描き方ひとつで変わってしまって映画って本当に面白い。
★容赦のない人体破壊描写
さすがR18映画!
とにかくあの手この手で破壊されていく人体。もはやすがすがしさすら感じるほどだ。
ジャンルのファンは「これこれ!」と目を輝かせていたにちがいない。
ゴア描写への気合の入りようはとても伝わってきたし、見ているこちらも痛々しさにぞくぞくときてしまった。
イーライ・ロス監督の『ホステル』を視聴した時も同様の気持ちになったが今作でもどう痛めつけるか、殺人シーンをどう見せるかということに一番力を入れてくれていたにちがいない!
冷凍庫の扉の内側に張り付いた皮膚をべりべりと剥がす・・・
鉄製の大型ダストボックスの蓋に挟まれて離れ離れになる上半身と下半身・・・
トランポリンで飛ぶチアガールの足元から飛び出してくる刃物・・・
例はこれくらいで控えておくが、現実離れしているであろう人体破壊の描写は
テンポも良く、ある意味小気味いいのである。
で、その肝心の殺人鬼の動機は冒頭にも触れた、1年前に起きたショッピングセンターでの暴動に大きく関係していた。
暴動の際に関わった人間をターゲットにして殺人を繰り返していくわけである。
犯人描写に絡んでツボだったシーンは、犯人の人間味が伝わってくるシーンだ。
犯人はとあるターゲットの自宅内に侵入して事を済ませたわけだが、ターゲットは猫と暮らしていた。
その猫が自分のエサ皿の横におすわりして、なんともいえない目で犯人を見つめる。
不気味な仮面をつけた犯人と見つめ合う猫。
それだけでもシュールだが、最終的に犯人は猫のご飯を用意して去っていくのであった。
ちなみに、猫好きを伏線にして犯人を暗に示すのか、と思いきや、そういう描写はなかったと思う。(見逃していなければ)
犯人は誰かという点については、わかりやすいミスリードだったし、ミステリー的な面白さを期待する肩透かしを食らうかもしれない。
若者が主役となるスラッシャー映画らしく、家庭の抱える問題だったり、こじれる三角関係の男女と、お約束はきちんと入っていて楽しめた。
ラストシーンもジャンルファンのツボを押さえた終わり方でさらに良い。
★気になった点
ジェシカの今カレと元カレの役割は思い切って逆にした方が収まりがよくない?とか、
警察が包囲している学校の中で犯人は堂々と獲物を誘拐するが、いくら何でも警備がガバガバすぎない?とか、銃器販売店の店員が絶妙な立ち回りで主人公のピンチを救うことになっているところも細かいけど気になってしまった。
【まとめ】
上に書いた気になった点はささいなことだ。
この映画で一番大事なことは、殺人鬼が大暴れすることだ。
その需要は完全に満たしてくれる王道のスラッシャー、スプラッター映画で、グロテスクな描写に耐えられる、なおかつそういうのが好きな人は十二分に楽しめる作品となっていると思う。
すでに続編が決定しており、2025年に全米公開予定とのこと。
今作以上に、グレードアップして楽しませてくれることを期待したい。